乃々と貸し別荘の話






 館内は混んでいた。

 動物が沢山展示されていて、全部脇の小さなプレートに説明書が書いてある。

 何より外と違って涼しいのが乃々には嬉しかったが、蒼空がスタスタ歩いて行ってしまうので、遅れない様にするのが大変だった。


「動物って言っても色々居るけど、ここは森の動物専門なんだね」


 展示の前の立入禁止の赤いロープに触れながら、蒼空が言った。




「お前飼育係になりたかったって言ってなかったっけ」

「うん。動物は大体好き」

「僕も嫌いじゃないけど、そこまでじゃない。飼うのは嫌、面倒だから」

「剥製って本物だと思う?」

「知らない。本物だったら気の毒にね。……ちゃんと見てこいって言われた。」




 説明書を読む蒼空を乃々は隣で眺めていた。

 乃々の楽しみにしていた野ウサギの展示は、透明なケースに入っていてライトアップされており、すぐ側に住処のミニチュアの模型があった。

 剥製はグレーの兎で、触っても平気な展示で、毛がふわふわと逆だっている。


「ハーレー」


 展示の前で、蒼空が呟いたので、乃々は目を瞬いた。



「ハーレーって?」

「野ウサギの事。塾で習った。英語でハーレーって言うん
だ」

「蒼空くん塾に行ってるの?」




 剥製を撫でながら、乃々が聞いた。




「行ってる。週2日。お前行ってないの?」

「行ってない。塾って楽しい?」

「別に。楽しくはないけど、色んな事を覚える。普通に過ごしてるより余っ程頭使うかな」

「ふーん」

「中学とか高校とかに上がった時、明らかに差が付くんだって。お前も行きな。」




 蒼空が言った。


「もっとも、お前はやっても出来るか分かんなそうだな」


 暗いホールの展示や、明るいカラフルな映像の展示などを見て進むうちに、乃々は動物がどうやって暮らしているかで頭が一杯になってきた。

 自分が森の中で生活している様な気分にもなって面白く、蒼空にそう言ってみたが、蒼空はそっけなかった。


「森の中じゃ暮らせないだろ」