「………こまる」
不意に横から視線を感じてそちらを見れば、真っ直ぐに私を見つめる榊原さんと視線が絡まった。
あまりにもひたむきな視線に勘違いしそうになって、私は自分の気持ちを紛らわすように口を開いた。
「だ、大丈夫ですよ?もし仮に好きな人がいたとしても、榊原さんのお見合い避けの役割は秘書として果たしますから。社長に怒られるまではですけどね」
そうヘラヘラと笑って見せるも、榊原さんは無表情のまま私を見下ろしている。
「さ、榊原さん…?」
沈黙が痛い、冷たい風よりも断然。
「あんたは颯馬が好きなんだな」
そう言い放った榊原さんの目が切なげに揺らいだ。
「ち、違います…!!!」
そんな彼を前にして、今度こそ私は無我夢中で否定した。
「柳さんのことは好きじゃないです!私が好きなのは…!」
そこまで言いかけて、ハッと口を噤む。この先は、絶対榊原さんにぶつけてはいけない。



