「さ、榊原さん…!?」
思わず背後の気配に振り向けば、案の定そこには榊原さんの姿があった。
「足怪我してんのにこんな所にひとりで来るなよ」
そう言いながら私の隣に並んだ榊原さんを横目で見上げる。いつ見ても、本当に彼は綺麗だ。こんな状況でもそんな事を思って榊原さんに惚れ惚れしてしまう自分に嫌気が差して、視線を海へともどした。
「すみません…海が見たくなって」
「奇遇だな、俺も」
波打つ音がなんだか大きく感じる。
「……で、俺の好きな人って?なんの話?」
ぎくり……。
うまく話を巻けたと思っていたが、それは無理だったようで。
「いや、それはその、ただの独り言っていうか…」
「無意識に呟くほど気になってたってことか?」
少し意地悪な言い方をする榊原さんに「そんなんじゃないです」と強めに言い返せば、分かりやすく肩を落とした。
「じゃああんたは?好きな人、いんの」
まるで小学生みたいな、つっけんどんな聞き方。
それが少し面白くて笑みが零れる。
「いるって…言ったら?」
榊原さんにされたように、私も少し意地悪に返事をしてみた。榊原さんにとってみれば、私は痛々しい勘違い野郎に映るかもしれないけど。
私に好きな人がいようといまいと、榊原さんには心底どうでもいい話だろう。そりゃお見合い避けとしての役目を果たせなくなるのでは?みたいな不安は持つだろうけど。



