「へ……っ」
改まってそんなことを言われるとは思っておらず、一気に顔に熱が集中したのが分かった。
合っていたはずの目線は、いつの間にか榊原さんに逸らされて私の一方通行になっている。
心做しか少し頬が赤い榊原さんに、なんだかこちらまで居た堪れない気持ちになりながら「いいですよ」なんて告げれば、間もなく強い力で引き寄せられた。
「さ、榊原さ…くるし」
そう言って肩をポンポンと叩くも緩まらない腕の力。
けれど、そんな榊原さんの体温に包まれて、さっきまでの胸の痛みがスーと薄れていくのがわかった。
「俺の事、嫌いになった?」
「ど、どうしてそんなこと…」
「避けてんじゃん」
「そ、それは…違くて…」
耳元で囁かれるそんな声に素直に気持ちを返せるわけがなくて、曖昧に濁してしまう。
榊原さんの腕の力が緩み、体が離れて向かいあわせになる。
「颯馬が、好き…なのか?」
私を見つめる色素の薄い目が微かに揺らいでいた。
「え?」
予想外の展開につい間抜けな声が漏れる。
なんで私が柳さんを?
もしかしてあの日、キスしてるのを見たから…?
それだけは違うと否定しなければと口を開きかけた時、タイミング悪く、倉庫にセミナースタッフが入ってきた。
「何してる?もうすぐプレゼンだ。早く行きなさい」
「はい、すみません」
榊原さんはそう返事をすると、私の足首を気遣いながら優しく立たせてくれた。
そのあと、肩を支えられながら一緒に倉庫を出ると、たまたま同じグループの子が通りかかり、私とその子の二人で席まで向かうことになった。
「無理するなよ」
そんな声を最後に榊原さんとは一旦離れることになってしまい、ちゃんと誤解を解くことが出来ないまま、私はプレゼンに挑むことになったのだった。
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