「…なんで泣いてんだよ」
涙でぐしゃぐしゃになった私の顔を見るやいなや、なぜか酷く顔を歪める榊原さんに小さく首を横に振る。
「泣いてません」
「そんな顔してよく言えたな」
榊原さんの大きな手が優しく頬に触れて、涙をそっと拭った。優しく笑う表情に唇を強く噛んだ。
あんなに会いたくないと思っていたのに、いざこうして触れると好きという気持ちが溢れて止まらない。苦しいのに、愛しくて、自分の気持ちを再確認してしまう。
このまま榊原さんの優しさにもたれかかってしまいたい。けれど、今はそうはしていられない。
「榊原さん、ブレゼン始まっちゃいます」
莉子に蹴られた足首を抑えながらゆっくりと体勢を立てる。思ったよりダメージを食らっていたようで、地面に足が触れるだけでジンジンと強く痛む。
「足が痛むのか?」
私のそんな様子に気づいた榊原さんは表情を曇らせる。
「なんなの?!悲劇のヒロイン面して!!本当はそんな足首も大したことないくせに!」
私たち2人を鬼の形相で睨みつけながら、莉子が大声を放った。
「…お前、金澤さんに何かしたのか」
「別に本当に捻ってるかどうかちょっと確かめただけよ!嘘ついてるかもって思わせる方が悪い。ていうか、そう思われて当然よ。榊原さんと柳さんに媚び売りまくってんだから!」
次の瞬間、榊原さんが纏う雰囲気が変わった。
「…それ、本気で言ってる?」
その場にゆっくりと立ち上がった榊原さんは莉子へと距離を詰めた。



