私は咄嗟に顔を横に逸らしたあと、榊原さんの手を解いた。
「わがままに付き合ってもらってありがとうございました。汗かいてる榊原さんをこれ以上こんな寒い所にいさせたら社長にボコられちゃいますね?」
何も言わない榊原さんの顔を見ることが出来ないまま、私はベンチを立ち上がった。
「足も大したことないので歩けます。気にしないで下さい」
上手く笑えているだろうか。
声は震えていないだろうか。
榊原さんは今、どんな気持ちなんだろうか。
ひとりで前へ歩き始めた私に榊原さんが近づく。
「肩ぐらいは支えてもいいだろ」
「……ありがとうございます」
距離はこんなに近いのに、どうしても遠い。
BBQ会場への道のりは、とても冷たくて静かで、ただただ息をするのが苦しかった。
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