「な、なにして…」
「欲しくなった、沙雪ちゃんのこと」
ニコリと微笑む柳さんは相変わらず何を考えてるのかさっぱりわからなくて。私はただ口をパクパクさせている事しか出来なかった。
「颯馬、お前!」
そんな私たちに降り注いだのは聞いたこともないような低くて冷たい榊原さんの声。
「倫太郎、ありがとう。探してくれて」
そう余裕の笑みを浮かべる柳さんとは打って変わって、あまりにも冷たくて黒い目をしている榊原さん。
今にも殴りかかりそうな剣幕に私は咄嗟にその場で立ち上がった。
「さ、榊原さん!迷惑かけてすみません。あと、柳さんは私を助けてくれただけで!それにさっきのもその、違くて、たまたま口と口が当たっちゃっただけで事故っていうか」
「違うよ?キスしたんだよ、沙雪ちゃん」
“キス”その言葉に不覚にも顔がぼっと熱くなる。
「せ、セクハラ…!!」
そんな私を横目に、よいしょと立ち上がった柳さんは徐に私の肩を支えるようにして抱き抱えた。
「倫太郎は気づかなかった?沙雪ちゃんが足首捻挫してること」
「は…?」
「まあいいや、僕が手当するから。」
そう私を連れ出そうとする柳さんの腕を榊原さんが強く掴んだ。
「金澤さんは俺のだ。俺が手当する」
俺のだ……??そんな言葉を上手く処理できないままでいると、急に体が宙に浮いた。
「ぅあ!」
自分が今、世に言うお姫様抱っこをされていると理解するのにそう時間はかからなかった。
「榊原さんっ!大丈夫なので降ろしてくだ」
「むり」
若干食い気味で却下され、口を噤む。
恥ずかしさでいっぱいの私のすぐ目の前には、榊原さんの横顔。薄らと汗が滲んでいる。
寒いのに汗をかくほど、探してくれたの…?
ぎゅっと胸が締め付けられる。



