「……沙雪ちゃん、寒くなったら絶対にすぐ言って」
視線をぷいっと横に背けた柳さんは、まだ少し腑に落ちていない表情を浮かべながらそう呟いた。
なんだか今の柳さんは何を言っても受け止めてくれそうで、気づけば私は口を開いていた。
「私、柳さんのこと嫌いでした」
「知ってたよ」
怖い。
「でも今は柳さんといるとすごく安心出来るんです。心配してついてきてくれて、ありがとうございます」
さっきまでみたいに軽く「はいはい」みたいにあしらわれるかと思いきや、なんの返答もない。
嫌いって言ったこと怒ってる?
そう思い、下から見上げるようにして柳さんの顔を横から覗いた。そうすれば、少し憂いを帯びた柳さんの瞳が私を捉える。
「沙雪ちゃんは僕のことどう見えてる?」
「どうって…」
「いいや、ごめん、忘れて」
すっと逸らされた視線に寂しさを覚える。なんだか全てを諦めてしまっているような、手放そうとしているような。そんな空虚感の中でさ迷っているかのように見えた柳さんに居た堪れなくなった私は、ポロリと言葉を零した。
「私にとって柳さんはベットみたいな人です」
「……は?」
「ベットって安心するじゃないですか?そんな人です。暖かくてそばに居ると安心する。なかなかいないですよ、柳さんみたいな優しい人」
やけに響く沈黙に耐えきれなくなってベラベラと喋る私と、黙る柳さん。
「私の足にまで気づいてくれて、ビックリですよ」
ハハハ、なんて笑って見せれば、次の途端、柳さんが顔を伏せて肩を揺らしながら笑った。



