足元に転がっていた何かを踏みつけた。しかもそれが右足だったばっかりに、容易にバランスを奪われてしまう。
このままではまた転ける………
自分の馬鹿さ加減に呆れながら床にダイブしていく私をどこか俯瞰的に捉えていた。このまま倒れて何もかも忘れてしまえれば楽になれるかな…なんて自己中心的思考が頭を埋め尽くす中、腕を強く後ろへ引かれる感覚と同時に、アロマの優しい香りがふわりと香った。
「や、やなぎさ…」
床にダイブして痛い思いをする未来から、柳さんの胸元にダイブする未来へと変わったことに気がついた矢先、バンッと物騒な大きな音を立てて扉が閉まった。
「沙雪ちゃんさぁ」
柳さんのため息が頭上から降ってきて、呆れ顔を浮かべているのだろうと容易く想像がついた。
「すみません…」
痛む足を庇いながら、柳さんからゆっくりと体を離し、心底申し訳なくて震える声を絞り出す。
「足腫れてるんだから走ったらだめだよ。幼稚園からやり直した方がいいと思う」
「…え、そっち?」
「そっち とは?」
てっきり何も考えずに小屋に飛び込んで転びそうになったことを怒られたのかと思った、なんてボソボソと口にすれば、「もちろんそれも怒ってるよ」とすんなり言われた。



