「ここにいい男がいますが、いかが?その様子じゃいい感じの人間、周りにいなさそうじゃん」
別に恋に飢えてる訳でもないし、どうしても恋愛したい訳でもない。ましてや、こんな、よくも知らないチャラそうな男と恋に落ちるだなんて、そんなこと有り得ない。
有り得ないのだけれど…………
「私の絶対的味方になってくれますか」
男の方へ体を向け、そう問いかけてしまった。
バカみたいな話だ。なのに今はそんなバカみたいな状況に乗っかりたいほど、メンタルが滅入っているらしい。
「なれるよ、俺なら」
冷たい風が前から強く吹いた。前髪が後ろへ立ちあげられ、望まないオールバック状態。チクチクと顔全体を容赦なく刺す冷たい風と、ドクドクとなる心臓。顔が熱くが感じるは風のせい?それとも心臓?
ゆっくりとこちらに近づいてくる男から目が逸らせない。黒髪の少し長めの前髪から覗く鋭い奥二重の瞳はとても艶っぽい。
「じゃぁ、なってください」
「いいよ」
こんな口先だけの恋なんかすぐに終わる。きっと、今この瞬間限りの恋〝もどき〟。
「じゃ、ケータイ番号教えて」
高校卒業後以来、久しぶりに舞い込んできた恋は、とてつもなく軽く、とてつもなく無茶苦茶なものだった。
そう、紛れもなく、私の壮絶なストーリーはこの日から始まったのだ。
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