ガサガサとリュックを漁り始める榊原さん。そこへ柳さんがまたしても胡散臭い笑顔を浮かべながら近づいてきて、「はい」と絆創膏を手渡した。
「颯馬?…さんきゅ」
榊原さんは軽くペットボトルの水で傷口を拭いたあと、優しく絆創膏を貼ってくれた。
「榊原さん、ありがとうございます。柳さんも、絆創膏ありがとうございます」
「沙雪ちゃんが大怪我しなくてよかった。もうすぐで山頂だから頑張ろうね」
柳さんも意外といい人なのかも…?なんて思いながら、ぺこりと頭を下げた後、再び前に進もうとした私に、榊原さんが徐に手を差し伸べてきた。
「え?」
「危ないだろ、その怪我でひとりで登るのは。」
「だっ、大丈夫です!迷惑かけ…!?」
断る余地なし。強引に手を取られ、気づけば榊原さんの傍へと引き寄せられていた。
「迷惑じゃない。それに、また転けられても困るからな?」
近くで聞こえる榊原さんの声は少し擽ったくて、心地よかった。
「ありがとうございます…」
心拍数が加速する。榊原さんに触れている場所が熱い。こうして榊原さんの優しさに触れられる事が、嬉しくて仕方がない。
こんな気持ち、気づいてはいけない、認めてはいけない。
だけどもう戻れない。
_______わたしは、榊原さんがすき。
「…ふぅん、“やっぱり”。あの倫太郎が、ねぇ」
自分の気持ちに手一杯で、だから気づかなかった。
柳さんがひとり、そう意味ありげに呟いていた事を。
.
.
.



