「や、山登りなんて…聞いてない……」
半ば強引に渡された登山ウェアを着用した後、スタート口で私は早々に弱音を吐いていた。
社会人になって運動なんてろくにしてないから体力には自信が無い。そもそも寒いし。
「急すぎるよね。」
しかも柳さんも一緒だし!?
「登るしかねえよ」
その上榊原さんはさっきから機嫌が悪めだし!?
ていうかさっきから、女性からの視線が痛い。それもこれも榊原さんと柳さんのせいなのだけど。こんな長身イケメンに、超絶平凡女が囲まれてたらそりゃかえって目立つ。周りからしてみれば意味わからん組み合わせでしょうよ…。
ねえ神様、私に一気に試練を与えすぎでは。
なんて神様に文句をたれても仕方が無いので、2人に続いて足を動かし始めた。
急な斜面、踏み違えたらもれなく川にドボンな飛び石、冬なのに突如現れる虫、視界を邪魔する草木。それらに四苦八苦しながら進む私とは裏腹に、悠々と前を進む2人。
立ち止まって引き返したくなる気持ちが湧き上がる中、迷惑をかける訳にはいかないという思いで、なんとか耐える。
そしてようやく終盤に差し掛かり、山頂がすぐそこまでとなった時。
「……きゃっ」
これが私の悪い所。もう着くからと言う緊張感が薄れた気持ちと疲れで、木の幹が歩行道に飛び出ていたことに気が付かなかった。



