甘々重々御曹司に愛されすぎて困ってます



寝られるわけがない、あんな状況下で。
と、思っていたのに、すっかり爆睡をかましていたのか、目を覚ました頃には既に船着場へ着いていた。


「どこでも寝れるんだな」
「えっと、それが唯一の特技というか…」
「なんだよそれ」


私との会話に吹き出すように笑った榊原さんにほっと胸をなでおろす。

よかった、いつも通りの榊原さんだ。

とは思いつつ、あのハプニングがまるで無かったかのようになっている事を少し残念だななんて思ったりもした。


大荷物を抱えながら榊原さんと船を降りれば、目の前には広大な海が広がっていて、東京とは見える景色が全く違う。実家にいた頃見ていた景色と少し似ていて、なんだか久しぶりに実家に帰ってきたような懐かしい気持ちになった。


荷物は宿泊予定のホテルへと送ってくれるとの話で、榊原さんに手伝ってもらいながら、大量の荷物をセンターの人へ預けた。


そしてマップを片手に会場へと向かい始める。同じセミナーを受けるのだろうかと思わせる人達が周りには結構いて、無意識にゾロゾロと団体で動く形になった。


船着場から歩いておよそ20分ほどで、ようやく見えてきた二階建ての建物。まるで学校の体育館を思い立たせるような見た目だ。


「着いたな。結構歩いたけど寒くなかったか」
「あっ、はい、大丈夫です」


ここでもまた不意打ちの優しさに撃たれていると…


「あれ、倫太郎?」


後ろからもう二度と聞きたくなかった声が聞こえた気がして、体が硬直した。