窓際に座っていた私は何か話題を見つけるべく、外の様子を見渡した。そんな私の目に入ったのは、ラーメンの出店。朝早くから珍しいなと思い、榊原さんの名前を呼びながら、つい勢いよく振り向いた。
「榊原さん、あそこにラーメ…っ」
もうすぐで鼻と鼻が触れそうな距離で、榊原さんと目が合った。矢先、すぐさま顔を背けられ、健全な距離感に戻る。
そんな榊原さんの様子に傷つく暇もなく、焦りが募る。付き合ってるとはいえ、榊原さんにとって私はあくまで仮彼女。そんな私が、榊原さんのパーソナルスペースにかなり踏み込んでしまった。
____怒ってるに違いない。
「あ、あの…ほんとすみません。これからはちゃんと距離感考えて行動しますので…」
こちらへ全く顔を見せてくれない榊原さんにどうにかして謝ろうと、若干覗き込むような形でそう声をかける。
そうすれば、予想だにしなかった榊原さんの表情が目に入り、思わず放心した。
手で口元を抑えながら私の方をチラリと横目でみる榊原さんは、耳まで赤くて。それはまるで、怒っているというより…照れて………
「…こっち見るな。あ、あんたは寝てろ」
そんなぶっきらぼうな言葉と同時に、また逸らされる視線。
「は、はい…」
ドキドキとうるさく鳴る心臓。どうして私にそんな顔するんですか?私は榊原さんにとって、お見合いを避けるための仮彼女でしかないはずでしょ…?
なんて問いかける勇気も権利も、私には無い。
榊原さんに期待してはいけない。それに、私なんかが好きになって貰えるような人じゃない。私だって…私だって別に好きじゃないんだし。
そう、好きじゃないのに……。榊原さんともし本当の恋人になれたなら…なんて馬鹿みたいに思ってしまう自分を殺しながら、榊原さんに言われた通り、窓際へ頭を傾け目を瞑った。
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