甘々重々御曹司に愛されすぎて困ってます



手元の資料へ落としていた視線を私の方へ持ち上げた榊原さんと目が合う。


「散らない」

「そ、それではお気遣いに甘えまして…」


何となく仕事モードの榊原さんは圧がある。いつものおちゃらけモードとは雰囲気がガラリと変わって、そのギャップにちょっと心臓がうるさい。


4人掛けのテーブルに静かに腰掛け、名簿を開く。とんでもない量の取引先数に目をかっぴらきながら過ごしていれば、気づけばお昼時に差し掛かっていたようで…


「金澤さーん、昼もってきてる?」


おちゃらけモードの榊原さんにそう声をかけられ、もうそんな時間かと気がつく。


「いや、私いつも食堂で食べてるので…」
「へぇ。じゃあ今日は俺と外で食べよ」


そう言って半ば強引に連れてこられたのは、少し古びた趣のある喫茶店だった。


中に入れば、コーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。「いらっしゃい」とマスターの心地よい声が私たちを出迎える。そしてそのまま案内された席に腰掛けた。


「ここのオムライスめっちゃ美味しいから、苦手じゃないなら金澤さんにも食べて欲しい。」


あまりにもキラキラした目で言うものだから、私はコクリと首を縦に振った。