甘々重々御曹司に愛されすぎて困ってます



斜めに目線を逸らしながら引き攣る顔でそう言えば、彼はフッと吹き出した。


「素直な方ですね。申し遅れました、私は柳 颯馬(ヤナギ ソウマ)です。」


さっきまでの嫌なオーラを払拭するほどの眩しい笑顔を唐突に投げられ、思わず後ずさる。

が、その時、ハッとした。ちょっとまって…柳ってことはまさか…うちの競合他社の柳財閥の御曹司では…!?


鈍い私でもさすがにわかった。この人、榊原さんのライバルだ。やばい、競合他社の御曹司に榊原さんの秘書がこんな馬鹿だとバレた。


唐突に明かされた新事実と恥を晒してしまった事実に思考をジャックされ、うっかりこちら側の自己紹介を忘れていると、柳さんの方から「貴方は?」と急かされた。


「あ、えっと、私は金澤紗雪です。」
「金澤さん。近々またお会いできると思います。楽しみにしていますね。」


そう言って整った顔面に浮かべられた穏やかな笑顔。けれど、私にはわかる。目が笑っていない。この人、何を考えているのか全くもって分からない……。


「それでは〜」と手をヒラヒラと振りながら去っていた柳さんの後ろ姿に、やっと目の前からいなくなってくれたと胸を撫で下ろす。