「ボール、持ってきました」
矢吹はいつもの淡々とした口調でそう言って、手でボールかごを軽く押して見せた。
私が後で取りに戻るつもりで体育館に置いてきたやつだ。
「あ、ああ……ありがとう」
「片付け、手伝います」
その言葉もまた抑揚がなくて、まるで誰かに言わされているみたいに聞こえる。
まさか、山岸がなんか言ったとか?
でも、山岸ならそんな回りくどいことしないはず。
「……いや、大丈夫。あと少しだから」
「いえ、持ってきたの、俺なので」
静かだけど、どこか語尾に力がこもっていた。
それ以上、押しつけがましい態度はない。
ただ、自分なりに筋を通そうとしているような、妙な真面目さがそこにはあった。
