フェアが終わり、
会場の照明が一段落とされる。
スタッフの足音が遠ざかり、
最後に残ったのは、
片付けの途中の静けさだけだった。
「お疲れさまでした」
直が、いつもより少し低い声で言う。
「お疲れさま」
ひかりも、同じ温度で返した。
二人で並んで、
グラスを片付ける。
言葉は少ない。
でも、動きは自然に噛み合っていた。
「今日は、助かりました」
ひかりが言うと、
直は首を振る。
「いい仕事でした」
評価でも、照れでもない。
ただの事実みたいな言い方。
それが、嬉しかった。
最後の照明を落とす前、
直がふと手を止める。
「……少し、飲みますか」
仕事終わりの一言。
「はい」
即答だった。
カウンターの内側で、
二人分のグラスが置かれる。
今日は、
演出用じゃない。
説明もいらない。
ひかりは一口飲んで、
小さく息を吐いた。
「……今日」
言いかけて、やめる。
直は、続きを急かさない。
「隣に立ってるの、
自然でした」
それだけ言う。
直は、
一瞬だけこちらを見てから、
視線をグラスに戻した。
「ええ」
短い返事。
でも、
その声は、どこか柔らかい。
ひかりは思う。
仕事人としての彼を、
恋人としての彼を、
同時に見られた夜だった。
それが、
こんなにも安心するなんて。
グラスが触れ合う音が、
片付けの終わった会場に、静かに残った。
今日は、
特別な言葉はいらない。
ただ、
同じ場所で、
同じ夜を終える。
それだけで、
十分に甘かった。
会場の照明が一段落とされる。
スタッフの足音が遠ざかり、
最後に残ったのは、
片付けの途中の静けさだけだった。
「お疲れさまでした」
直が、いつもより少し低い声で言う。
「お疲れさま」
ひかりも、同じ温度で返した。
二人で並んで、
グラスを片付ける。
言葉は少ない。
でも、動きは自然に噛み合っていた。
「今日は、助かりました」
ひかりが言うと、
直は首を振る。
「いい仕事でした」
評価でも、照れでもない。
ただの事実みたいな言い方。
それが、嬉しかった。
最後の照明を落とす前、
直がふと手を止める。
「……少し、飲みますか」
仕事終わりの一言。
「はい」
即答だった。
カウンターの内側で、
二人分のグラスが置かれる。
今日は、
演出用じゃない。
説明もいらない。
ひかりは一口飲んで、
小さく息を吐いた。
「……今日」
言いかけて、やめる。
直は、続きを急かさない。
「隣に立ってるの、
自然でした」
それだけ言う。
直は、
一瞬だけこちらを見てから、
視線をグラスに戻した。
「ええ」
短い返事。
でも、
その声は、どこか柔らかい。
ひかりは思う。
仕事人としての彼を、
恋人としての彼を、
同時に見られた夜だった。
それが、
こんなにも安心するなんて。
グラスが触れ合う音が、
片付けの終わった会場に、静かに残った。
今日は、
特別な言葉はいらない。
ただ、
同じ場所で、
同じ夜を終える。
それだけで、
十分に甘かった。
