予定していたハーブが、届いていないことに気づいたのは、
開始十分前だった。
スタッフの動きが、わずかに速くなる。
声が、少しだけ高くなる。
ひかりは進行表を見ながら、
代替案を頭の中で探し始めていた。
そのとき。
カウンターの奥で、
直が、一度だけ全体を見渡した。
慌てる様子はない。
誰かを呼ぶこともしない。
ただ、
用意していた別のグラスを一つ取り、
香りの近い素材を静かに選ぶ。
「説明、少しだけ変えます」
それだけ。
カクテルの名前は、そのまま。
意味も、壊さない。
違うのは、
“理由”だけだった。
誰も気づかないまま、
場は、何事もなかったように流れていく。
「……助かりました」
後ろで、スタッフが小さく言った。
直は、頷いただけだった。
ひかりは、
その横顔を見て思う。
この人は、
場を救っても、
主役にはならない。
だからこそ。
同じ仕事をしている自分は、
この背中を、
信頼してしまうのだと。
開始十分前だった。
スタッフの動きが、わずかに速くなる。
声が、少しだけ高くなる。
ひかりは進行表を見ながら、
代替案を頭の中で探し始めていた。
そのとき。
カウンターの奥で、
直が、一度だけ全体を見渡した。
慌てる様子はない。
誰かを呼ぶこともしない。
ただ、
用意していた別のグラスを一つ取り、
香りの近い素材を静かに選ぶ。
「説明、少しだけ変えます」
それだけ。
カクテルの名前は、そのまま。
意味も、壊さない。
違うのは、
“理由”だけだった。
誰も気づかないまま、
場は、何事もなかったように流れていく。
「……助かりました」
後ろで、スタッフが小さく言った。
直は、頷いただけだった。
ひかりは、
その横顔を見て思う。
この人は、
場を救っても、
主役にはならない。
だからこそ。
同じ仕事をしている自分は、
この背中を、
信頼してしまうのだと。
