約束の日は、
思っていたより、すぐに来た。
仕事の予定を入れなかった夜。
それだけで、
少しだけ落ち着かない。
ひかりは、
鏡の前で立ち止まる。
今日は、
仕事じゃない。
進行表も、
時計も、
気にしなくていい。
そう思うほど、
何を基準に動けばいいのか、
わからなくなる。
指定された待ち合わせは、
駅から少し離れた通りだった。
人通りは多すぎず、
でも静かすぎもしない。
ひかりが着いたとき、
直はすでにそこにいた。
黒いシャツでも、
カウンターの中でもない。
ラフなジャケットに、
いつもより柔らかい雰囲気。
一瞬、
誰だかわからなかった。
「……こんばんは」
声で、わかる。
「こんばんは」
直は、
少しだけ笑った。
「お仕事、終わりじゃない顔ですね」
「今日は、休みです」
「それは……珍しい」
そう言いながら、
こちらを見る目は、
いつもより近い。
「お待たせしました」
「いえ。今、来たところです」
本当は、
少し早く着いていた。
でも、
言わなくていい気がした。
「行きましょうか」
「はい」
歩き出す距離は、
自然と並ぶ。
前でも、
後ろでもない。
会話は、
すぐには始まらなかった。
それでも、
気まずさはない。
ひかりは、
歩きながら思う。
——ああ。
今日は、
“誰かを整える時間”じゃない。
そう気づいた瞬間、
胸の奥が、
静かにほどけていった。
思っていたより、すぐに来た。
仕事の予定を入れなかった夜。
それだけで、
少しだけ落ち着かない。
ひかりは、
鏡の前で立ち止まる。
今日は、
仕事じゃない。
進行表も、
時計も、
気にしなくていい。
そう思うほど、
何を基準に動けばいいのか、
わからなくなる。
指定された待ち合わせは、
駅から少し離れた通りだった。
人通りは多すぎず、
でも静かすぎもしない。
ひかりが着いたとき、
直はすでにそこにいた。
黒いシャツでも、
カウンターの中でもない。
ラフなジャケットに、
いつもより柔らかい雰囲気。
一瞬、
誰だかわからなかった。
「……こんばんは」
声で、わかる。
「こんばんは」
直は、
少しだけ笑った。
「お仕事、終わりじゃない顔ですね」
「今日は、休みです」
「それは……珍しい」
そう言いながら、
こちらを見る目は、
いつもより近い。
「お待たせしました」
「いえ。今、来たところです」
本当は、
少し早く着いていた。
でも、
言わなくていい気がした。
「行きましょうか」
「はい」
歩き出す距離は、
自然と並ぶ。
前でも、
後ろでもない。
会話は、
すぐには始まらなかった。
それでも、
気まずさはない。
ひかりは、
歩きながら思う。
——ああ。
今日は、
“誰かを整える時間”じゃない。
そう気づいた瞬間、
胸の奥が、
静かにほどけていった。
