カウンターの端に並んで座る。
直がメニューに目を落とす。
「重くない方がいいですよね」
「はい。あまり強くないもので」
「じゃあ……これにします」
彼は、自分の分も一緒に頼んだ。
「お腹、少しなら大丈夫ですか」
「はい」
「軽いもの、お願いします」
店主が頷く。
グラスが運ばれてくるまで、
二人とも、特に言葉を探さなかった。
氷の音が、ひとつ。
目の前に置かれたのは、
淡い色のカクテル。
一口飲んで、息をつく。
「……落ち着きます」
「それなら、よかった」
Bar Afterで聞いた声より、
ほんの少しだけ、柔らかい。
ほどなくして、
小さなプレートが出てくる。
温かいパンと、
軽く味付けされた前菜。
「助かります」
「今日は、長かったですから」
その言葉で、
ひかりはようやく気づく。
朝からずっと、
一度も立ち止まらなかったこと。
判断して、整えて、
誰かの一日を預かっていたこと。
一口、パンを口に運ぶ。
温かさが、
少し遅れて広がった。
