——ああ。
胸の奥が、
静かにざわつく。
さっきまでの嫉妬とは、
少し違う。
あきに向けたものでも、
ひかりに向けたものでもない。
“二人だけで通じる空気”に、
触れられた気がしたからだ。
ひかりは、
そのままカウンターへ来た。
「直」
名前を呼ぶ。
直は、
一瞬だけ間を置いてから顔を上げる。
「……はい」
また、敬語。
ひかりは、
それに気づいて、ほんの少し眉を下げた。
「さっきの」
「何か、あった?」
直は、
すぐに答えなかった。
その沈黙が、
ひかりの不安を膨らませる。
「私がいないところで」
「何、話してたのかなって」
責めてはいない。
ただ、確認したいだけ。
直は、
ひかりを見る。
さっき、
あきに向けたあの強さとは違う目。
「……何でもない」
そう言いながら、
声がほんの少しだけ硬い。
それが、
余計にひかりを困らせる。
「そっか」
ひかりは、
それ以上踏み込まなかった。
でも。
その一歩引いた態度が、
直の胸に刺さる。
——違う。
——それは、俺の場所だ。
直は、
グラスを置いて、低く言った。
「さっきの」
ひかりが顔を上げる。
「俺が、悪い」
即座だった。
「嫉妬した」
ひかりの目が、
わずかに見開かれる。
「……私が?」
「うん」
直は、
逃げなかった。
「ひかりが、あいつに向けた顔」
「知ってる顔だったから」
ひかりは、
一瞬だけ言葉を失ってから、
小さく息を吐いた。
「……何もないよ」
「もう、何も」
直は、
それを聞いても、すぐには頷かない。
「分かってる」
「でも」
「分かってても、嫌だった」
その正直さに、
ひかりの胸が、きゅっと鳴る。
直は、
少しだけ声を落とした。
「二次会終わったら」
「一緒に帰ろ」
お願いじゃない。
確認でもない。
“隣にいる”という前提の言葉。
ひかりは、
ゆっくり頷いた。
「……うん」
その返事で、
直の表情が、ようやく柔らぐ。
もう、
過去に割り込ませない。
今夜は、
ちゃんと同じ場所へ帰る。
胸の奥が、
静かにざわつく。
さっきまでの嫉妬とは、
少し違う。
あきに向けたものでも、
ひかりに向けたものでもない。
“二人だけで通じる空気”に、
触れられた気がしたからだ。
ひかりは、
そのままカウンターへ来た。
「直」
名前を呼ぶ。
直は、
一瞬だけ間を置いてから顔を上げる。
「……はい」
また、敬語。
ひかりは、
それに気づいて、ほんの少し眉を下げた。
「さっきの」
「何か、あった?」
直は、
すぐに答えなかった。
その沈黙が、
ひかりの不安を膨らませる。
「私がいないところで」
「何、話してたのかなって」
責めてはいない。
ただ、確認したいだけ。
直は、
ひかりを見る。
さっき、
あきに向けたあの強さとは違う目。
「……何でもない」
そう言いながら、
声がほんの少しだけ硬い。
それが、
余計にひかりを困らせる。
「そっか」
ひかりは、
それ以上踏み込まなかった。
でも。
その一歩引いた態度が、
直の胸に刺さる。
——違う。
——それは、俺の場所だ。
直は、
グラスを置いて、低く言った。
「さっきの」
ひかりが顔を上げる。
「俺が、悪い」
即座だった。
「嫉妬した」
ひかりの目が、
わずかに見開かれる。
「……私が?」
「うん」
直は、
逃げなかった。
「ひかりが、あいつに向けた顔」
「知ってる顔だったから」
ひかりは、
一瞬だけ言葉を失ってから、
小さく息を吐いた。
「……何もないよ」
「もう、何も」
直は、
それを聞いても、すぐには頷かない。
「分かってる」
「でも」
「分かってても、嫌だった」
その正直さに、
ひかりの胸が、きゅっと鳴る。
直は、
少しだけ声を落とした。
「二次会終わったら」
「一緒に帰ろ」
お願いじゃない。
確認でもない。
“隣にいる”という前提の言葉。
ひかりは、
ゆっくり頷いた。
「……うん」
その返事で、
直の表情が、ようやく柔らぐ。
もう、
過去に割り込ませない。
今夜は、
ちゃんと同じ場所へ帰る。

