ケーキを食べ終えて、
カップを流しに置く。
部屋は、
昼より少しだけ影が増えていた。
ソファに並んで座って、
ひかりは膝の上で手を組む。
直は、
何も言わずにテレビを消した。
沈黙。
でも、
居心地は悪くない。
ひかりが、
ぽつりと言う。
「……最近さ」
直が視線を向ける。
「ちょっとだけ、
ズレてるなって思ってた」
責める言い方じゃない。
事実を置くみたいな声。
「時間とか。
連絡の間とか」
直は、
すぐに否定しなかった。
「うん」
短く頷く。
「俺も、思ってた」
ひかりは、
少しだけ驚いて直を見る。
「でも」
直は、
言葉を選ぶみたいに間を置く。
「ズレてるから、
離れてるとは思わなかった」
ひかりの胸が、
静かに鳴る。
「……私、
ちょっと我慢してたかも」
「何を」
「寂しいって言うの」
直は、
それを聞いて、
一瞬だけ目を伏せた。
「ごめん」
即答だった。
「気づいてたのに、
言わせてた」
ひかりは、
首を振る。
「いいの。
分かってる」
言い切ったあとで、
少しだけ声が揺れる。
「でもね」
一呼吸。
「今日、直が来てくれた瞬間」
ひかりは、
直を見る。
「全部、どうでもよくなった」
直の喉が、
小さく動く。
「……それ、
反則」
低い声。
ひかりが、
首を傾げる前に。
直は、
そっと距離を詰めた。
触れない。
でも、近い。
「ひかり」
声が、
少しだけ掠れる。
「もう、
我慢しなくていい?」
確認だった。
命令でも、
勢いでもない。
ひかりは、
一瞬だけ迷ってから、
小さく頷く。
「……うん」
その瞬間。
直は、
ひかりの手を取る。
少しだけ強く。
でも、
乱暴じゃない。
「ズレてた分」
距離が、
一気に縮まる。
「ちゃんと、
埋めたい」
ひかりが、
息を吸う前に。
唇が重なる。
迷いはなかった。
でも、
急がない。
直の手は、
ひかりの背中に回って、
確かめるみたいに留まる。
離れる気がない、
という意思だけを伝える。
ひかりは、
そのまま直のシャツを掴んだ。
ズレていた時間。
言えなかった気持ち。
全部まとめて。
今は、
ここに置いていい。
直が、
ひかりの額に額を寄せて、
低く言う。
「……好きだよ」
我慢してきた分だけ、
静かで、
確かな声だった。
カップを流しに置く。
部屋は、
昼より少しだけ影が増えていた。
ソファに並んで座って、
ひかりは膝の上で手を組む。
直は、
何も言わずにテレビを消した。
沈黙。
でも、
居心地は悪くない。
ひかりが、
ぽつりと言う。
「……最近さ」
直が視線を向ける。
「ちょっとだけ、
ズレてるなって思ってた」
責める言い方じゃない。
事実を置くみたいな声。
「時間とか。
連絡の間とか」
直は、
すぐに否定しなかった。
「うん」
短く頷く。
「俺も、思ってた」
ひかりは、
少しだけ驚いて直を見る。
「でも」
直は、
言葉を選ぶみたいに間を置く。
「ズレてるから、
離れてるとは思わなかった」
ひかりの胸が、
静かに鳴る。
「……私、
ちょっと我慢してたかも」
「何を」
「寂しいって言うの」
直は、
それを聞いて、
一瞬だけ目を伏せた。
「ごめん」
即答だった。
「気づいてたのに、
言わせてた」
ひかりは、
首を振る。
「いいの。
分かってる」
言い切ったあとで、
少しだけ声が揺れる。
「でもね」
一呼吸。
「今日、直が来てくれた瞬間」
ひかりは、
直を見る。
「全部、どうでもよくなった」
直の喉が、
小さく動く。
「……それ、
反則」
低い声。
ひかりが、
首を傾げる前に。
直は、
そっと距離を詰めた。
触れない。
でも、近い。
「ひかり」
声が、
少しだけ掠れる。
「もう、
我慢しなくていい?」
確認だった。
命令でも、
勢いでもない。
ひかりは、
一瞬だけ迷ってから、
小さく頷く。
「……うん」
その瞬間。
直は、
ひかりの手を取る。
少しだけ強く。
でも、
乱暴じゃない。
「ズレてた分」
距離が、
一気に縮まる。
「ちゃんと、
埋めたい」
ひかりが、
息を吸う前に。
唇が重なる。
迷いはなかった。
でも、
急がない。
直の手は、
ひかりの背中に回って、
確かめるみたいに留まる。
離れる気がない、
という意思だけを伝える。
ひかりは、
そのまま直のシャツを掴んだ。
ズレていた時間。
言えなかった気持ち。
全部まとめて。
今は、
ここに置いていい。
直が、
ひかりの額に額を寄せて、
低く言う。
「……好きだよ」
我慢してきた分だけ、
静かで、
確かな声だった。

