「急にお邪魔してごめんね。
なんか……タイミング悪かったかな?」
ひかりは、
小さく首を振る。
「いえ。
私も、びっくりしただけで」
由里は、
その返事に安心したように、
肩の力を抜いた。
「よかった。
変な空気になったらどうしようって、
ちょっと思ってたから」
その言い方は、
場を和らげるためのものじゃなくて、
ただの正直だった。
直は、
二人の様子を見てから、
短く言う。
「律に頼まれただけ。
すぐ帰る」
「うん、分かってる」
由里は頷いてから、
ひかりに向かって、
軽く笑った。
「ほんと、すぐだから。
気にしないでね」
三人の空気は、
思ったよりも、
静かで、穏やかだった。
ぎこちなさは、
あっても一瞬。
それぞれが、
ちゃんと“大人”だった。
ひかりは、
胸の奥で、
小さく息を吐く。
——ああ、大丈夫だ。
この人は、
過去じゃない。
今を壊しに来た人でもない。
ただ、
人生の途中で、
少し交差しただけの人。
