「ダメよ、ダメダメ!曲止めて!」
パンパンっと手を叩いて練習を止めたのはこの物語の主人公・15歳の女の子のレイが通う音楽教室の先生の1人エマだった。
エマは結婚を機に引退はしてしまったがかつてはレイの母親のソフィアと同じミュージカル女優として活躍していた女性で今はミュージカル俳優を目指す卵達の指導をしている。
「全っ然声が出てないわ。昨日より声が出てない。それにダンスの動きもキレが悪い。…レイ、今日具合でも悪いの?何かあった?」
「別に何もないです。冬だから乾燥してるせいかも…」
「将来ミュージカル女優を目指すなら喉のケアはきちんとしなきゃダメよ。ちょっとの風邪に負けてるようじゃ舞台はすぐ降ろされるわ。貴方が1番よく分かってる事じゃない?この教室に通ってる子達と違って、貴方は赤ん坊の頃からミュージカルの舞台と言うものを誰よりも近くで観てきたのだから」
「気をつけます」
「OK。じゃあ5分休憩したらまたすぐレッスンに戻るわよ。来週オーディションなんだから、本当なら休んでる暇はないんだからね?」
「はい」レイは頷き返すと鼻の下の汗を指で拭い取った。



