これは恋か、妄想か。



「違います違います! ほんとに! ただの登校中! ただの隣人!たまたま、本当にたまたま横にいただけの、道端の小石みたいな存在なんです!」



必死すぎて首を振りすぎて、視界がシェイクされたみたいにぶれる。

たぶん傍から見たら、遠心力で首が取れかけている可哀想な人に見えているはずだ。



「ふーん?」



信じてない。その平坦で冷え切ったトーンで分かる。


私の必死の否定が、まるで雨粒みたいに彼を素通りして、地面に消えていく。



その濁った視線が、私の首振り運動を無視して、反射的にハルの袖を掴んでいた私の腕へ、ゆっくりと落ちた。



次の瞬間。



「……ッ!」



伸びてきた手が、雨粒を乱暴に切ってこちらに迫る。

 
あ、これ。


無理やり掴まれて、物語の「人質役」が確定しちゃうやつだ。

そう思った瞬間、身体がガチガチに強張る。
逃げたいのに、ふやけた脳とは裏腹に、足はコンクリートに根を張ったみたいにびくともしない。
妄想ではあんなに機敏に動けたのに、現実は非情だ。



「ちょ、待っ……!」



喉が裏返る感覚。自分でも引くぐらい高い声が出た。
でも、そんな恥ずかしさを気にしてられる状況じゃない。

……誰か! お願い、誰でもいいからこの強制イベントの「スキップボタン」を押して!!


掴まれる、と思ったその時。