落ち着きすぎている。その平熱が、逆に私の妄想を煽っているような気がする。
「なんでそんな落ち着いてるの!? 今まさに主人公補正で絡まれる流れ! このあと『おい、そこの女』って言われて、私の平穏な高校生活が三巻打ち切りコースに突っ込む瞬間なのよ!」
「結菜、声。ちょっと大きいよ」
「あ、ごめん……でもさ、これ完全に私のせいじゃない? 見てたから? 私がガン見したから!?」
校門の方を、そっと盗み見る。
中心にいるのは、金髪の少年。
雨に濡れた前髪が額に張りつき、鋭い視線は他校の不良たちではなく――確実に、こちらを捉えていた。
「……ねえハル。今からでも記憶消せない? 魔法的なやつで。パチンって指鳴らして『はい、君は登校中のアメンボ』みたいな」
「能力系はさすがに無理だと思う」
「じゃあ時間戻そう! 玄関まで戻って、お兄ちゃんの花屋的天気予報に三時間くらいツッコミ入れてれば、この場面回避できたのに!」
条件が揃いすぎている。
土砂降り、多勢に無勢、謎の金髪。
これは偶然じゃない。
神様が書いた強引なストーリー展開という名の暴力だ。神様、私はそこらに生えてる雑草と同じなんです。
