これは恋か、妄想か。



あるんでしょ、じゃない。
あるようにされてるんだ。



これはきっと選別。この雨の中でも来る生徒と、来ない生徒を分けるためのテスト。登校した瞬間に、見えないスタンプを押されるやつ。

合格、不合格じゃない。
耐えたか、耐えなかったか。

私はハルの横に並びながら、傘越しに前方を睨む。

「絶対おかしいよ。こんな雨で普通に授業やるって。何かの陰謀だと思わない?」

ハルは少し考える素振りをして、それからゆっくり口を開いた。


「へぇ。陰謀かぁ」


否定しない。
そこがまた怪しい。


「だってさ、先生たちもきっと裏で話してるんだよ。今日はあえて休校にしません、とか。逆境を乗り越える心を育てる日です、とか」

私の言葉を聞きながら、ハルはうんうんと頷いた。

「なるほどね。雨は試練で、生徒は被験体」

「そう。たぶん私たち、観察されてる」

「じゃあ今、俺たちポイント稼いでる最中かも」

さらっと言われて、私は足を止めかけた。

「……ちょっと待って。それ乗るところ?」

「面白そうだから」

ハルはそう言って、少しだけ笑った。
眠たげな目の奥が、一瞬だけ冴えた気がする。

その瞬間、私の妄想の中で、校舎の屋上に設置された巨大なモニターが起動する。

画面には、びしょ濡れになりながら歩く生徒たちの姿。名前とともに表示される評価ゲージ。

結菜、耐久値上昇。
ハル、余裕ポイント加算。


「……ハルさ」

「ん?」

「もしさ、これ全部終わったあとに、頑張った人だけに何かあるとしたらどうする?」

ハルは少し間を置いてから、空を見上げた。

雨雲に覆われた、重たい空。

「その時は、ちゃんと受け取ればいいんじゃない?」

「なにを」

「頑張ったって事実」

その言葉が、妙に胸に引っかかる。

私は傘を握る手に少し力を込めた。
雨は相変わらず激しくて、世界は相変わらず理不尽で、学校は相変わらず休みにならない。

それでも。

ハルは私の妄想を笑わない。
否定もしない。
ただ、同じ雨の中を歩いている。

それだけで、この豪雨フィールドを進む理由が、ほんの少しだけ増えた気がした。