最強女子にも帰る場所がある~Choice your back home~

「霞先輩が好きです。」

「え?俺?」


 霞先輩の諦めていたような顔から、一気に驚きの表情に変わる。


「はい。私が殺し屋って知った時も変わらずに接してくれました。あと…。」

「ん?なんだ、急に恥ずかしがって…。」

「……出会った当初から、尊敬していたのと同時に多分、憧れていたんだと思います…。」

「………美夜。」


 霞先輩は学ランの第二ボタンを取ると、


「あげる。」

「え?」

「本当は抱きしめたいけど、これだから。」


 先輩の手には花束と卒業証書などが両手に塞がっていた。


「それに…。」


 霞先輩は続けた。


「第二ボタンは彼女以外にはあげちゃいけないんだって。」

「じゃ、じゃあ…。もらいますね…。」


 こんな大事なものを私が受けっとっていいのかと思いながらも受け取る。

 でも、やっぱり…。


「せ、先輩。少しだけ…。今日でなかなか会えなくなりますから。」


 自分から霞先輩に抱きつく。


「ちょ、美夜。」


 先輩の困惑した声が聞こえて、


「ごめんなさい…。でもっ…。」


 霞先輩の方を見上げると、耳まで真っ赤に染めた霞先輩がいた。


「……美夜に抱きつかれんのヤバい…。」

「へ?」


 こうして私と霞先輩のお付き合いが始まったわけだが、一つ難点があった。

 それは、


「ねぇ、美夜はさ。遠距離じゃん。霞先輩と会ってる?」


 俗に言う遠距離恋愛だということ。


「………会ってない。」


 付き合って二カ月が経つも春休みにデートした以来だ…。

 お互い、通っている学校も違うし、霞先輩はサッカー部に入ってハードな練習をして疲れているだろうからと会っていない。



「ち、ちなみに、会っていなかったらどうなるの?」


 嫌な予感がするも、聞かずにはいられない。


「自然消滅よ。」

「…し、自然消滅…。」

「そう、自然と別れる感じ。」

「じゃ、じゃあ…どうしたら、そうならない?」

「ずばり、通話よ!」


 ということで、霞先輩に電話をすることになった。

 お互い連絡先を交換しているから、一応私からだってわかるはず。


「お願い、出て…。」


 四コールぐらいすると、


『もしもし、美夜?』

「か、霞先輩!もしもしっ…。」


 ひ、久々の霞先輩の声だ…。


「そ、その…。今暇ですか?」

『筋トレしていた。』


 うっ、タイミング間違えた…。


『で、どうかしたのか?』

「へ?」


 やばい、何にも考えてなかった…。

 自然消滅するのが怖くて…なんて言えない!


『あ、もしかして…なかなか会えなくて自然消滅?するんじゃないかって思った?』

「え、なんで分かったんですか!?………あ。」

『美夜のことなら大抵分かるよ。そう言えば、今週の休み空いてる?』

「え、はい。空いています…。」

『良かった。じゃあ、久々に会ってデートしないか?』

「え?」

『土日は部活が休みになったんだ。それに…付き合って二カ月記念だろ…。』

「は、はぃ…。」


 その後の会話は自分から電話しといて覚えていない。

 だけども仕方ない。

 霞先輩が、


『付き合って二カ月記念だろ…。』


 とか言うから!

 頭の中がその言葉と声で埋め尽くされて何回もリフレインしている。

 落ち着くために、テレビを見ようと電源を付ける。


「あ、ブルース大西☆のドラマ…。続編が出るんだ…。」


 最終話は確か…。

 ブルース大西☆はDV夫に負けてしまうも、千佳さんが夫からまた逃げ出してブルース大西☆の元に帰ってくるという流れで終わった。

 それより、


「デート、大丈夫かな…。」


 この先も、霞先輩の無自覚な愛の言葉に翻弄される私であった。

 流石、野獣先輩だった。