最強女子にも帰る場所がある~Choice your back home~

 外に出ると、冬の寒さが皮膚に突き刺さった。

 でも、皆とお喋りしながら歩くと少しだけ和らいだような気がする。


「そう言えば、どうして雪斗は袴なの?」

「あ、それ俺も思った。」

「あぁ、俺の家は正月は家族だけじゃなくて仕事仲間も来るからな。」

「なるほど。」

「そういえば、白河の家は由緒正しい家だと聞いたことある。」

「……あー、うん。由緒正しいっちゃ正しいかも。」


 雪斗はヤクザの若頭だから自分の組の幹部や部下とか別系列の人達に挨拶すのかな?

 でも、普通とはかけ離れた正月なのはなんとなく分かった。

 あっという間に神社に着いてしまった。


「神社だ。」


 他の参拝客と同様に手水舎で手を洗って行列に並ぶ。


「そういえば、ここの神社ってどんな神様祀っているの?」

菊理媛(くくりひめ)っていうらしいよ。なんでも、縁結びの神様であの世とこの世の境界?にいるんだって。」

「へえ…。」


 そして、順番はあっという間にやって来てお賽銭を投げてお願い事をする。

 二礼二拍手一礼?をする。

 ……残り三か月、普通として過ごせますように。

 神様にそうお願いする。

 皆がお願い事をし終わると、


「あ、おみくじしようぜ」

「いーね。」

「賛成。」


 蘭の提案に満場一致でおみくじを引くことになった。


「お、大吉だ。」

「俺もだ。」

「おっと、俺も大吉。」

「俺も!美夜は?」

「……大凶。」


 おみくじには“過去の因縁を断ち切れ”“秘密を早めに打ち明けなければ大切なものを失くす”と書かれていた。


「ほ、ほら!たかが、おみくじだし!」

「何回も引けばいいって!」

「むしろ大凶って大吉より確率低いからある意味ラッキーだって!」


 皆が慰めてくれる。

 そう、たかがおみくじ…にしては、なんだか的を得ているようで怖い!

 ん?

 怖い?

 初めてそう思った。

 でも、なんで?

 そう思いながらおみくじを結ぶ。

 すると、いきなり…


 ーーボンッ!!!


 激しい爆発音がした。

 境内にいる人はすぐに避難しようと、慌てて出口へと向かう。


「……っ、爆発?」

「恐らく、神社を管理する俺らと敵対している組だ。」


 雪斗曰く、ヤクザは最近では神社を管理運営して儲けるのが主流なのだとか。

 理由は税金を取られないからである。


「私は急いで犯人のところ行ってくる。雪斗は皆を安全な場所に!」


 犯人のところへ行く。

 恐らく、まだ爆弾がしかけられているはず!

 神社の敷地内に漂う微かな火薬の匂いを頼りに探していく。

 すると、すれ違った人物から火薬の匂いがした。


「……っ。」


 犯人の服を手が伸ばせる範囲で掴み、床に転ばせる。

 コートの内ポケットから予め持ってきていた銃を取り出して、向ける。

 中身は何も入ってない。


「あなたが、爆弾をしたの?」

「あぁ、俺がしたよ!」


 なかなかの潔さ…。


「だけどよ、神なんていねぇんだしどうだっていいだろ?天罰なんて下らねえよ。」


 確かに、神様なんていないのかもしれない。

 でも、そんなのは確かめようがないし神様がいないからと言って神社を爆発していい理由にはならない。

 ………こんなの、過去の私が聞いたら驚くだろうね。

 それにしても、この人…目の焦点が合っていない。

 しかも、ずっと興奮状態だ。

 まさか…。

 ちょうど、警察がやってくる音がした。

 すぐに銃を仕舞う。

 銃刀法違反で逮捕されるわけにはいかないからだ。


「お巡りさん、この人が犯人です。爆弾と同じ火薬の匂いと薬物の匂いがします。」


 そうして、警察により犯人は逮捕された。

 一息つくと、ザッと境内の石が踏まれた音がした。


「誰?」


 まさか、ハデース?

 雪斗と不審者が言っていた人物かと思って銃を出してしまった。


「美夜、なんだよ。それ。」


 しかし、正体は蘭だった。

 頭が真っ白になって血が全身から抜けるような感覚がする。


「蘭、どうしてここに?」

「いいから答えろよ!」


 大声で怒鳴る蘭。

 文化祭以来のピリつきである。

 もうここまで来てしまったのなら言ってしまうしかない。

 他の三人にはスッと息をするように打ち明けれたのに、蘭にはなかなか言えなかった。


「………私、殺し屋なの。ジェヘナ、なの。」

「なんだよそれ…。俺が守りに来る必要なかったじゃねぇかよ…。」

「いや、そういう意味じゃなくて…。」


 今の蘭は私の話を聞いてはくれないだろうと思った。


「美夜!蘭!」


 霞先輩と雪斗、英が駆けつけてくる。


「探した、二人してどっか行くからな。」

「……というより、美夜が持ってるものって…。」

「ま、まさかそれで爆弾犯を…。」

「してないよ!そうなる前にお巡りさんが連れ去って行ったよ!」


 慌てて弁明する。

 皆が来てくれて場が少し和やかになったような気がしたが、それはただ火に油を注いでいた。


「なんだよ、皆は美夜が殺し屋だってこと知っていたのかよ!」

「………俺は、あの不審者のとき。」

「俺は文化祭。」

「俺も霞先輩と同じくらい。」

「俺だけかよ!知らなかったの!」


 更に激昂する蘭。


「ごめん。でもいつかはちゃんと言うつもりだった。」

「じゃぁ、いつだよ。」

「それは…。」


 言い淀む。

 だって、いつ言うかは考えていなかったのは事実だったから。


「………嘘でもいいからそこは言えよ…。」

「………ごめん。」

「はぁ、帰る。」


 踵を返した蘭。

 引き留めようと蘭のコートの袖を掴もうとする。

 だけど、手は宙に浮く。


「蘭…。」


 置いていく蘭。

 この日から霞先輩の卒業式まで蘭が私と話すことはなかった。