最強女子にも帰る場所がある~Choice your back home~

 演技の練習をする間もなく本番がやってきた。

 なんとか、覚えている限り演技をする。

 舞台裏にはカンペがあり、ときどき


『いいよ、その感じ!』

『もっと、表情柔らかく!』


 と演技指導が入る。

 そして、ストーリーは進んでいく。


「お嬢さん可愛いから、美味しいリンゴどうぞ。」

「まぁ、美味しそうなリンゴ。……あぁむ…うぐっ!」


 倒れる。

 観客席から、


「いや、毒回るの早すぎだろ!」

「おもろいけど!」

「いいわよ~、美夜ちゃん!」


 なんと、霞先輩のお母さんもいた。

 知り合いにこういうのを見られるのは恥ずかしいな…。

 うっすら、舞台裏を見ると


『ちょっと倒れるの早すぎ。』


 と、お叱りの指導が入った。

 シーンは移り替わり、蘭こと王子様対魔女になった。


「回復魔法~!」

「うっ!」

「おーほほほ!」


 小人によって大剣を渡された蘭は魔女に勝利した。

 そして、いよいよクライマックスのキスシーンがやってきた。

 通常ならマスクを付けた蘭が眠っている白雪姫にマスクを付けて、キスするフリをする。


「白雪姫、どうして…。」


 悲しむ小人七人。

 ちなみに、小人役は全員なぜかバスケ部とバレー部なので、小人じゃなく巨人である。

 そして、蘭が小人に謝る。


「すまない、俺がもっと早く駆けつけておけば…。」


 そして、マスクを付ける…。


「白雪姫、目を覚ましてくれ。」


 あれ、マスクを付ける感じが全然しない。

 しかし、人が近づく感覚はする。


「……っ。」


 マスクを付ける感覚の代わりにしたのは唇が触れ合う感覚。

 突如、湧き上がる悲鳴に近い歓声。

 驚いて目を開ける。

 目の前にはあの日と同じく熱の籠った瞳が私を射抜く。


『いい加減気づけよ。俺がどれだけ、美夜のこと好きだと思っているんだよ。』


 脳裏からこの言葉も状況も空気も、全部が引き起こされる。


 ーーーどくっ。


 何、今の感覚…。

 血が湧き立つように身体中が廻って、やがて頬に熱が集中する。

 ふと、カンペを見る。


『セリフ!セリフ!セリフ!』


 と書かれている。


「あれ、私…。」

「良かった、白雪姫。もうダメかと…。」

「夢の中で王子様の声がしたの…。」


 何事もないように物語は進み、劇は大成功?を収めた。