最強女子にも帰る場所がある~Choice your back home~

 テニスの授業が終わり、特に何も起こることがないまま午後の授業、放課後…と時間は過ぎ去っていった。

 今日はブルース西成☆がでている番組はないので、夜の散歩(パトロール)に行ってくる。

 ティシャツにショートパンツというラフな恰好で髪を靡かせて、食卓の灯りで賑わう夜の街を歩く。

 夏に近づく前の風は生暖かくて湿度はあれど、少し優しくて懐かしい感じがするから好きだ。

 コンビニまで来ると、見知った人がいた。


「月下さん?こんな時間にコンビニ?」

「うん、雪斗君は?」


 私の視線に気づいたのか、雪斗君は肉まんを頬張りながら振り返った。


「俺は、少しお腹空いたからコンビニに来たって感じ…。」

「そうなんだ。」


 彼は肉まんをまた頬張る。


「夜ご飯入るの?」

「これが夜ご飯のつもり。」

「え?運動部なのに余計お腹空いちゃうんじゃない?」

「……まぁ、いろいろあって。そっちこそ、コンビニで夜ご飯でも買いに来たの?」

「ううん。散歩のつもり。」

「散歩?」

「うん、夜の散歩は日中の散歩より落ち着くから。」

「へぇ…。」


 そんな会話をしていると雪斗君のお腹が鳴り、彼は恥ずかしそうにお腹を押さえた。


「……ほら、言わんこっちゃない。」

「はは…。俺だって人間なんだからお腹は空くよ。」

「確かに。……ちょっと、待ってて。」

「え?」


 コンビニの店内に入り、おにぎりや飲み物、甘いもの、カップ麺などを買う。

 コンビニの外に出て、待ってくれていた雪斗君に買いもの袋ごと渡す。


「お待たせ。あげる。」

「は?こんなにたくさん…。」

「生きるためには、お腹を満たすことから始まる。」

「な、なるほど。」


 納得しきれていない表情を浮かべる彼。


「助かるんだけど、こんなにもらっていいの?」

「うん。いつも頑張っているみたいだから。」


 まさか、完璧人間として頑張っている人がコンビニの肉まんなんてかわいそうだ。

 完璧人間として生きる彼と普通の人間として生きる私。

 この一か月、普通の人間として振る舞うのを心がけている私は、こんなにも自分を隠すのが疲れるなんて思っていなかった。

 彼も、もしかしたら同じかもしれないと勝手に思ってした行動だった。


「ふはっ、ありがたくもらうよ。」

「うん、そうして。」


 その日以来、何故か雪斗君と顔が合えば話すようになり、


「ちょっ、美夜!雪斗君とどういう関係なの!?」

「友達?」

「ちょっ、私の推しと友達なんて…。」

「推し?」


 という話はまた今度。