最強女子にも帰る場所がある~Choice your back home~

 球技大会は終わり、その日の放課後。

 帰りの準備をしていると、


「月下さ~ん。お客さんだよ。なんと!霞先輩!!」

「どうも…。」


 少し気まずそうに廊下から覗く野獣先輩こと、草野先輩がいた。


「今行きます。」


 草野先輩の元へ行こうとすると、一瞬視線を感じた。


「どうかしましたか?」


 わざわざ三年生が二年生の教室に来るなんて…。


「あー…。今日の球技大会、初戦のときは悪かった。」

「先輩、何かしましたか?」

「審判だったんだよ、俺。だけど、笛吹かなかったろ?悪かった。」


 綺麗な九十度で腰を曲げて謝罪する先輩。


「そんな謝らないでください。」

「でも、嫌だったろ?ファウルなのに、ちゃんと判定していなくて…。俺がもっと吹いていたらもっと点とか取れてただろうし…。」

「どの道勝ったので気にしないでください。それに、うちのクラスは…。」


 教室の中から、


「祝勝会やろーぜ!」

「打ち上げだー!焼き肉行くぞー!」

「さんせー!」


 と、騒がしくも賑やかな声が聞こえる。


「皆、気にしていませんし浮かれていますよ。」

「だけど…。」

「先輩、ドーナツ好きですか?」

「は?」


 先輩の目が一瞬「何言ってんだ、こいつ…。」とでも言いたげな目に変わる。


「悲観主義者はドーナツの穴を見るとがっかりして、楽観主義者はドーナツを見て喜ぶ…。先輩がファウルを判定しなかった傍ら、危険なプレーはありましたけど、なんだかんだ皆楽しめたみたいですし、良いのでは?」

「……そっか。」


 それを聞いた先輩はフワッと笑った。

 その笑顔はまるで、霞草のように優し気でどこか控え目だった。


「はい。」

「というより、君は図書館で前にサッカーのルールの本を探していなかったか?」

「あっ。先輩の薦めてくれた本、とても分かりやすかったです。」

「そっか、役に立てたのなら良かった。ねぇ、そう言えば名前…。」

「ちょっと、いいですか?霞先輩。俺、今からこいつと一緒に帰る約束しているんで。」


 背後から蘭の声が聞こえてきて、振り向く。


「そんな話、一度も…。」

「美夜は黙って。」


 ただ事ではない雰囲気を感じて黙る。

 あれ、そういえば二人って仲が悪いんじゃ…。

 前に二人のことを教えてくれた女の子達に目を向けると、「ご愁傷様。」という哀れみの目が向けられた。


「いや。もう用事はないし、蘭の好きにすればいい。」

「どーも。」


 そうして、蘭に引きずられるように廊下を歩き、辿り着いた先は階段の踊り場だった。


「どうしたの?」

「どうもしてねーよ。」


 蘭は手を放し、それだけ言うと去ってしまった。