静かなる、恋の包囲網

結局その夜は遅くまで雄平が塔子に付き添っていた。
久しぶりに過ごすふたりだけの時間は、穏やかで和やかなひと時だった。
ここ最近の出来事を取り留めもなく話しながら、塔子は幸せだなと感じていた。
倒れたことをよかったと思うわけではないが、今一緒にいられることがうれしかった。

―――私はやっぱり、雄平さんが好きなんだわ。

もちろんそれは、大学時代からのあこがれで、塔子にとっては【推し】のような存在。
現実で恋人になれるとは思ってもいなくて、同じ空間にいられるだけで満足だ。

「明日からは出張でしばらく会えなくなるが、しっかり休養するんだぞ」
「はい、わかっています」

明日の夜から1週間の予定でアメリカ出張の入っている雄平はきっと忙しいはずなのに、塔子の側を離れようとはしなかった。

「帰ってきたら塔子の手料理が食べたいな」
「いいですよ、いつでも作ります」

その後も、「唐揚げがいいな」「肉じゃがも好きだ」などと他愛もない会話をしながら、塔子と雄平は時間を過ごした。