静かなる、恋の包囲網

二人になると、雄平の態度が変わった。

「仕事の事は気にしなくていいから、ゆっくり体を休めるんだ」

穏やかな口調で話す雄平に、先ほどまでの不機嫌さはない。

「ありがとうございます」

優しさの滲む言葉を受け、塔子は素直にうなずいた。

「ところで副社長、お時間は大丈夫ですか?」

専属秘書を外れたとは言え、塔子は雄平の大まかなスケジュールは把握している。
予定では今頃タカミヤホールで来客を迎えている時間のはずだ。

「ああ、先方に日程を変更してもらった」

何でもないことのように話す雄平の言葉に、塔子は驚いた。
来客の予定を当日に変更するのはよっぽどのことで、普段の雄平なら絶対にしない行動だ。

「私は大丈夫ですので、どうぞ仕事に戻ってください」

自分のために雄平の仕事に影響が出るのは申し訳ない。そんな思いで口にしたのだが、その言葉を聞いた瞬間、雄平の表情が曇った。

「俺がいたら邪魔か?」
「いえ、そんな…」

なぜそうなるのかと思いながら、何も言い返せず塔子は黙ってしまう。
しばらくの間病室の中に沈黙が流れた。