静かなる、恋の包囲網

塔子が意識を取り戻してからしばらくして雄平が病室にやってきた。
いつも冷静で焦った様子を見せることのない雄平にしては珍しく、息を切らせながら走ってきたようだ。

「大丈夫なのか?」
「すみません、迷惑をかけました」

少しでも雄平の力になりたくて頑張っていたのに、結局足を引っ張ることになってしまった。そのことが申し訳なくて、塔子は頭を下げようとした。

「本当だよ、無理をするんじゃないとあれだけ言ったのに」

―――え?

正直、「大丈夫だよ」「仕事の事などを心配しなくてもいいから」と優しい言葉をかけてもらえるものと思っていた。
しかし、雄平は不機嫌そうに塔子を睨んでいる。
悪いのは自分だと塔子にだってわかっているが、懸命に働いた結果倒れたのだ。労わりの言葉があっても、いいじゃないかと不満に感じた。

「しばらくは静養するんだな」
「そんな、忙しい時期なのに…」

これ以上みんなに負担はかけられないと訴える塔子だが、雄平は聞き入れてくれそうにはない。

「無理をしてまた倒れたんでは何の意味もないだろう」
「そんな・・・」

馬鹿なことを言わないでくださいと笑い飛ばそうとした塔子だったが、雄平の顔は真剣そのもので本気なのだと塔子にもわかった。