静かなる、恋の包囲網

久しぶりに雄平と顔を合わせて食事をし上機嫌で出社した塔子だったが、仕事に行けば山のような業務が待っている。
もちろん自分よりも雄平の方が何倍も忙しいのだとわかってはいても、今日も残業になりそうだなと塔子は肩を落とした。

「田所さん、業務が溜まっているようならいくつか引き受けましょうか?」

朝礼の後、課長の辻本が塔子に声をかけてきた。
おそらくは、連日の残業が続いている塔子のことを気遣ってくれているのだろう。

「私は、大丈夫です」
「そうですか。では無理はせずに、何かあればすぐに相談してください」
「はい、ありがとうございます」

塔子よりも辻本の方が多くの業務を抱えているのは間違いないし、忙しいは他の仲間もみな同じ。
秘書課に異動になって日が浅い塔子は仕事に慣れなくて周囲よりも少し時間がかかっている。もう少し時間が経てば仕事にも慣れて今よりも早く仕事をこなせるようになるだろう。
それに、雄平が今とりかかっている新規プロジェクトが軌道に乗れば、状況は良くなるはずだ。
それまではどんなことをしてでも頑張ろうと、塔子は決めている。