静かなる、恋の包囲網

この生活は、ただ単に利害が一致しただけの同居で、そこに個人的な感情はない。だからこそ、雄平のプライベートに踏み込んでいくべきではないと、秘書課長の辻本と話をしたことで痛感した。

―――これ以上、雄平さんの足を引っ張ることをしてはいけない。

あれ以来、塔子は何度も何度も自分自身に言い聞かせていた。
そうすることで仕事に集中し、少しでも雄平の力になりたいと思っていた。

「どうした、なんだか顔色が悪いな」

珍しく朝食に顔を合わせた雄平が、塔子の顔を覗き込む。

「どうもしませんよ。今日も忙しそうだなと思っただけです」
「そうか?無理をするんじゃないぞ。最近残業が続いているようだが・・・」
「大丈夫です。忙しいのはみんな同じじゃないですか、課長も遅くまで残っているし、雄平さんだって、いつも日付が変わるまで仕事をしているでしょ」
「それはそうだが・・・ところで、最近よく辻本と一緒にいるようだが?」
「え、そうですか?」

先日駅前のカフェで杏ちゃんのことを尋ねて以来、課長との距離が少しだけ近くなった気はしている。
仕事が忙しく残業で残ることが多くなったせいもあるのかもしれないが、昼休みの社食や残業の時間に声をかけられ一緒に休憩を取ることが何度かあった。
おそらく雄平もその姿を見かけたのだろう。