静かなる、恋の包囲網

「これで、ひとまず安心ですね」

ケイタリングで用意した夕食をつまみながら、胸を撫で下ろすように塔子が言った。

「ああ、城田専務には今期限りで職を辞してもらうつもりだ。辻本については、どこまで関わっていたのか調べる必要があるだろうが、おそらく城田に操られていただけだろう」

会議の後、社内は騒然としていた。
表だって情報が漏れるようなことはなかったが、重役会議で城田専務の不正が追及されたとの噂が広がった。

「本当にありがとうございました」

雄平が助けてくれなかったら、城田専務の思惑に乗り、塔子は濡れ衣を着せられたまま会社を追われるところだった。

「塔子が謝る必要はないよ。君は被害者だ。そもそも城田専務が標的にしたかったのは俺だし、そのために君が利用されたんだから」
「でも、私が足かせになったのは事実です」

自分がアルバイトなんてしていなければ、角田本部長との写真が流出するようなことがなければ、事態はここまで複雑にならなかった。

「悪いのは城田専務だ。いろいろと裏で画策して私服を肥やそうなんて、絶対に許さない」

怒りを滲ませる雄平の言葉から、創業家一族の御曹司の顔を垣間見た気がして、塔子は不思議な気分になった。