静かなる、恋の包囲網

「田所さん、これを20部コピーお願いします」
「はい、承知しました」

塔子を取り巻く環境は何の変化もないまま、翌日も勤務が始まった。
たまたま今日は定例の重役会議だということもあり、秘書課もバタバタと慌ただしい。
こんな日には雑務をこなす人間が一人でもいれば助かるわけで、塔子の前にはコピーや書類作成の依頼が溜まっている。

「田所さん」

気が付けば、黙々と業務をこなしていた塔子のすぐ横に辻本が立っていた。

「はい」

塔子が驚いて立ち上がる。

「午後の予定は?」
「えっと……」

一瞬何を聞かれているのかがわからず、塔子はポカンとしてしまった。