静かなる、恋の包囲網

「少し、昔話をしてもいいか?」

しばらくして、雄平は穏やかに口を開いた。
塔子は静かに雄平に向けて顔を上げる。
息がかかりそうなほどの距離で、2人は見つめ合った。

「あの台風の日、暗闇の中で塔子が現れなかったら、俺はどうなっていたのかわからないんだ」
「え?」

――雄平に限って、そんなはずはない。

「本当だ。俺は暗闇が苦手で、子供の頃から何度かパニックを起こしていた。あの時だって塔子が声をかけてくれなかったら、1人で暴れていたかもしれない。だから、塔子に救われたんだ」
「そんな……」

信じられない思いで、塔子は雄平を見た。
雄平の言葉が全て真実なのかどうかはわからないが、必死に塔子の罪悪感を拭い去ろうとしてくれているのがわかった。
塔子は、そのことが嬉しかった。