静かなる、恋の包囲網

雄平に抱えられるようにして、塔子はマンションへ帰ってきた。

「少しは落ち着いた?」

放心状態だった塔子をリビングのソファへ座らせ、雄平は床に膝をついたまま顔を上げる。
その優しく穏やかな眼差しに、塔子は小さく頷いた。

「何があったのか、聞かせてくれるか?」

アパートからマンションへ帰るまでの間、雄平は何も言わず、ただ塔子の側にいて支えてくれた。
そのことが塔子にはありがたかった。
だからこそ、雄平にはすべてを打ち明けるべきだと思えた。

「アパートに、父が現れたんです」
「お父さんは、確かいないって……」

そういえば、父はもういないと話した記憶がある。
実際、生きているのか死んでいるのかもわからない状態だったから、そう説明しても問題ないと思っていた。

「順を追って説明しますね」
「ああ、頼む」