静かなる、恋の包囲網

―――これは父からの脅しだろうか?

もし塔子が頼み事を聞き入れてくれなければ、今度は海斗の元に行くと言っているように聞こえた。

「なあ、塔子、悪いが」

そこまで聞こえた瞬間、塔子は靴箱の上に置いていたカッターナイフを手にした。

「お願い、出て行って」

父の頼み事なんて聞きたくない。
長年の思いと、あの日、あの夜の光景がフラッシュバックして、塔子はパニックになった。

「塔子、落ち着け」

そう言って1歩踏み寄ろうとした父に、塔子は持っていたカッターナイフを向けた。