静かなる、恋の包囲網

小さなアパートだけに、風通しをして荷物を準備してもそう時間はかからない。
塔子は10分ほどですべての用事を済ませると部屋の隅に座り込んだ。

―――いつになったら、この部屋に帰ってこれるのかしら?

雄平からは物騒だからこのアパートは引き払ったほうがいいと言われている。
もちろんそこには「遠慮なんてすることはないから、ずっとここにいたら良い」という含みがあるのだが、そこまで頼るのは申し訳ない気がして、塔子は曖昧に返事をごまかしていた。
さすがに今すぐに新しいアパートに引っ越すことはできないが、春になり、弟の海斗が社会人となれば、少し余裕が出てくるだろう。
そうなったら雄平のマンションを出て、新しいアパートを探そうと塔子は考えていた。