静かなる、恋の包囲網

「今日だけでも休んだらどうだ?」

食事中も、塔子が小さく息をつくたびに雄平の口から出るのは同じ言葉。
一方、不安な思いを抱えたままの塔子も、それを取り繕うだけの気力がなくて、表情はおのずと暗くなる。

「なぁ、本当に、どうしたんだ?塔子らしくないぞ」

―――そんなこと、自分でもわかっている。

しかし、それを口にする勇気はなくて、塔子はまた下を向く。
塔子自身、自分は可愛げのない人間だと思う。 不器用で要領が悪くて、損ばかりしている自覚もある。
もちろんなんとかして改善したいとは思うものの、どうすることもできずに今に至る。

―――本当に、嫌になってしまうわ。

真面目で誠実な雄平に対して大学時代からずっと、好意を持っていることに間違いはないし、恋愛感情ではないものの、雄平も塔子のことを気に掛けてくれていた。 そのことを知って塔子はうれしかった。 杏のことだって、自分が窮地の時に助けてくれて、これからは何があっても信じようと思っていた。
しかし……

「塔子」
「え?」

食事の手を止めて考え事をしていた塔子は、雄平の声で我に返った。

「本当に、どうしたんだ」

語気を強めて向けられる言葉が、塔子に刺さる。 それでも塔子は何も答えなかった。