静かなる、恋の包囲網

―――こんな時間に誰かしら?

塔子だって、雄平のプライベートをのぞき見する趣味はないし、 気づかないふりをして立ち去るべきだとも思う。
しかし、塔子は無意識のうちに耳をすましていた。

「ああ、大丈夫だ。世話になったな」

雄平にしてはくだけたような、親しげな口調。
電話の相手が仕事関係者でないのは間違いない。

「後は俺が対処するから、これ以上は何もするな。いいな?」

なぜだろう、電話の相手は女性のような気がした。
しかし塔子が知る限り、雄平に親しくしている女性はいないはずで、ただ一人思い当たる人物がいるとすれば――

「ありがとう……杏」

その言葉を聞いた瞬間、塔子は固まった。