静かなる、恋の包囲網

「でも、誤解しないでほしい。もう一度あの時の人に会いたいと思って調べさせたのは事実だが、専属秘書として側に置きたいと思ったのは塔子――君だったからだ」
「え?」

真剣な声で話す雄平に、うつむいていた塔子が顔を上げた。

「アメリカ勤務から日本に帰ってくる時、専属の秘書を置くようにと言われても正直必要ないと感じていた。自分のことは自分でできるから専属の秘書など置いてもらう必要はないと父にも訴えた。だが聞き入れられず、じゃあ自分で選びますと言ったところで君のことが思い浮かんだんだ。もちろん何か期待したわけじゃない。ただ会ってみたかっただけだ。しかし、一緒に仕事をしてみて、君の有能さに引かれていった。こんな話、信じられないか?」
「いいえ」

おそらく誇張も嘘もない正直な思いなのだろう。
だからこそ塔子は疑念を抱くことも不快感を抱くこともなく、素直に受け入れた。