静かなる、恋の包囲網

「いつか、ちゃんとお礼が言いたかったんだ」

どこかほっとしたように、雄平が笑ってみせる。
その時、塔子の頭に疑問が浮かんだ。

「もしかして、私を秘書に選んだのは、その時のことが理由ですか?」
「ああ。どうしても君に会いたかった」

―――なるほど、そういうことか。

雄平の言葉を聞いて、塔子はやっと腑に落ちた。
全く秘書経験のない総務課の人間をいきなり重役秘書なんてありえない人事だと思ったが、そういうことであれば納得もできる。
普段完璧な御曹司を地で行く雄平にとって、自分の弱い部分を見せてしまった塔子のことが気になっていたのだろう。

「それで、納得しました」

憧れの存在だった雄平に近づくことができたことは塔子にとってうれしいことだったが、理由がわからない異例の人事に正直戸惑いもあった。
でもこれですっきりした。