静かなる、恋の包囲網

「塔子、大丈夫か?」

雄平が息を切らしながら駆けてきて塔子を抱え上げる。
状況が飲み込めない塔子は、呆然と雄平を見つめた。

「どうして?」

雄平は今アメリカ出張中のはずで、日本にはいないはずだ。

「塔子が心配で帰ってきた」
「そんな……」

確かに昨日の朝からメッセージを一つ返しただけで、ずっと着信を無視している。
心配をさせているのだろうという自覚はあったが、新規プロジェクトのための重要会議でアメリカに行っている雄平が、まさか帰ってくるとは思っていなかった。

「事情は聞いた。一人にして悪かったな」
「雄平さん……」

温かな雄平の温もりに包まれて、塔子の緊張がほどけていく。

「もう大丈夫だ。誰にも塔子を傷つけさせない」

そう言って塔子に向ける雄平の眼差しはとても優しいものの、その奥に静かな憤りをたたえていた。