マンションに帰ると言いながら、塔子は街の中をさまよっていた。
人ごみの雑踏に紛れることで、無になれる気がした。
何を考えるわけでもなく左右の足を交互に出すだけの行為に、今置かれている状況から現実逃避できるような錯覚を覚えていた。
―――もう少しだけ歩いたら、マンションに帰ろう。
定期的に震えるスマホの振動にふと我に返りながら、自分に言い聞かせる。
昨日からスマホの着信は鳴りやむことがない。
すべて雄平からのものだとわかっているが、塔子には出る勇気がなかった。
「あの、すみません」
歩いていた塔子の耳元に声が聞こえた。
自分でも気づかないうちに、駅前の大通りから一本裏の道に入り込んでいたようで、周囲には人通りも多くない。
背後から聞こえた声に何だろうと思い足を止め、ゆっくりと振り返る。
その瞬間、手首をギュッとつかまれた。
―――キャッ。
声にならない声を上げ、塔子の体が固まった。
人ごみの雑踏に紛れることで、無になれる気がした。
何を考えるわけでもなく左右の足を交互に出すだけの行為に、今置かれている状況から現実逃避できるような錯覚を覚えていた。
―――もう少しだけ歩いたら、マンションに帰ろう。
定期的に震えるスマホの振動にふと我に返りながら、自分に言い聞かせる。
昨日からスマホの着信は鳴りやむことがない。
すべて雄平からのものだとわかっているが、塔子には出る勇気がなかった。
「あの、すみません」
歩いていた塔子の耳元に声が聞こえた。
自分でも気づかないうちに、駅前の大通りから一本裏の道に入り込んでいたようで、周囲には人通りも多くない。
背後から聞こえた声に何だろうと思い足を止め、ゆっくりと振り返る。
その瞬間、手首をギュッとつかまれた。
―――キャッ。
声にならない声を上げ、塔子の体が固まった。



